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神戸市今昔写真集

■神戸市今昔写真集(税込9,990円)

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【2010年10月10日(日)神戸新聞】
原風景探る貴重資料 輝かしい昭和再現 

 戦争や大災害が起きると、多くの人命とともに慣れ親しんだ街の風景も失われることが多い。これに人為的な開発や取り壊しを含めると、街は常に変化し続けているともいえる。

 その中で過去を振り返ってみようとする時、人の記憶ほど曖昧で頼りないものはない。しかし、そこに写真という映像資料が加わればかなりの客観性をもって当時を再現することができる。

 この本は、その写真で過去の神戸を再現し、現在の街の姿と比較し思索するという構造になっている。資料として扱われる時代は戦後の昭和20年過ぎから40年あたりまで。このころは昭和という時代が一番輝いた時代だった。

 新開発の松竹劇場や聚楽館は多くの観客を集めていたし、元町商店街の西口には三越デパートが威容を誇っていた。街には市電が走り、湊川公園には神戸タワーがあり、摩耶山には焼失前の旧天上寺があった。

 このころの街の写真を眺めると、貧しさが残っているものの高度成長期の躍動感も伝わってくる。以後神戸は沿岸部を埋め立てて人工島をつくり、市電を廃止し近代化路線をつき歩んでいく。この本の監修者でもある田辺眞人氏はこう述べる。「私は昭和四十五年〜平成に入るまでの約二十年間が、日本の生活文化の歴史にとって五百年ぶりの断絶期だと考えている」

 500年前にも日本の生活文化が大きく変わる時期があった。室町時代中期にはじまり広がった和服や和食、書院造りの建築がそれにあたる。これらの文化が、今度は昭和45年以降の20年間で断絶してしまったと。

 昭和30年代にはまだ残っていた日本人の原風景。その一端を探ろうとするこの本は貴重な映像資料になっている。ただ本書の価格が庶民の手の届くものになっていないのは残念。庶民の残した映像資料が、もっと手に取りやすい形でも出版されることを願っている。

(永田 写真家)

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